Monday, June 15, 2009

問題解決型思考の教科書

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会社で著者の研修を受けることになり、事前配布された2冊。

①世界一やさしい問題解決の授業 <渡辺健介>

巷で非常に売れた話題作。
問題解決系、ロジカルシンキング系の本は既にだいぶ読んでいるので完全にスルーしていたのだが、こうして手元に届くとは…
内容はやはり平易。「世界一やさしい」と書いてあるが、おそらくそうなんだろうと思う。そもそも本書のターゲットとなる真の読者は誰なのだろうか。著者の活動、あとがき、本のつくりから判断するとどうみても中高生というところなのだが、実際に書店でこういう「世界最高峰のコンサルティングファーム」の方が書いた本を買うのはビジネスパーソンであるわけで、どうもはっきりしない。
対象を本当に中高生にするのだとしたら非常に良い本だと思う。頭のいい人はなかなかこれほど簡単には書けないものだが、見事に思考のプロセス・切り口を説明できている。著者のデルタスタジオという会社にはけっこう期待。
ただ、個人的には新しい内容はなく、非常にきれいな状態のまま本棚へ。


②自分の答えのつくりかた <渡辺健介>

続編?のこちらの方がだいぶ面白かった。
内容はやはり非常にやさしいロジカルシンキング、問題解決型思考の紹介なのだが、ストーリー仕立てで子供もすいすい読めそうだ。対象は高校生~若手社会人(のうちロジカルシンキングの初学者)あたりなのではないかと感じた。前作の売れ方を見てからの軌道修正なのか、それとも最初からの構想通りなのか、気になる。むしろその辺りをこっそり聞いてみたい。

第2作については共感できたところ、面白いと思ったところをいくつかメモしておくことにする。

『そう、差は追い込まれないと見えないものなのである。』(P17)

これはかなり感じている。あまりにも余力のある状態で仕事をしていると、周囲の人との差は良くも悪くも感じない。「誰でもできる」状態なのだから当然と言えば当然。余力がどれくらいあるかを計るのは難しい。追い込まれた状態(負荷がかかっている状態)になって初めて実力差が見えてくるもの。人はある程度周囲の環境に刺激を受けながら成長する生き物なので、やはりヌルい環境というのはある種の危険性を孕んでいる。ライバルやベンチマークは意識的に外に置きたい。

『これまで「自分の価値観」だと思っていたことが、実は自ら意識して選んだものではなく、単に生きてきた環境の価値観をそのまま受け入れていただけだということに気づいた。』(P91)
『自分が思い込んでいた「自分らしさ」とは、あくまで特定の環境を前提としていたこと、環境と立場が変われば一瞬にして吹き飛ぶものだったことを、身をもって体感したのだ。』(P104)
『社会的にどうだなんて表面的なことよりも、自分のモノサシを持って生きて行くことが一番重要だと実感できる。』(P105)

かなり意識的に注意してもしきれないほど陥りやすい罠。考え様によっては罠でも何でもないのだが、自分の意志で自分の人生を創って行こうという人にとっては間違いなく罠だ。本当に自分はどういう生き方をしたいのか、何故生きているのか、絶えず自問自答し続けなければならない。
たまに友人や後輩に言うのだが、自分の存在が世の中というジグソーにおける一つのピースだとするのならば、生き方は大きく分けて2つだ。周りのピースの形に合わせて(外部からの力によって)自分が変形されすっぽりと埋まるか、それとも自分の形は自分で創り、その形が上手くはまる場所を全世界(ジグソー全体)から探すか。解はみなそれぞれが持っている。どちらも最終的にはすっぽりと納まるのだからどちらが正解とは言えない。ピースとピースがお互い良い意味で影響し合える状態を経由するが、僕は結局後者の生き方をするつもりだ。前者を「和を以て尊し」とは考えない。ただpassiveなだけだというのが個人的な考え方。

『正しいと思うことを貫くのは、こんなにも大変なものだったのか。』(P248)

これは考えていかなければならないテーマだと認識している。世の中に万人が良しと思う選択というものはなかなか存在しない。反対者が常に一定数いる中で、自分や自分の周囲にいる人をどうやって守っていくのか、難しい問題だ。本書は問題解決型思考、ロジカルシンキングを教えることに留まらず、そうした思考を使いこなす人が直面するであろう問題にも所々で触れている点が素晴らしいと思う。


その他、テクニカルな部分で2つ。
・pros/cons をそのまま受け入れるのではなく、主体的に仕掛けて変えられないか常に疑ってみる。
⇒consが意外と簡単に消えたり、prosになったりするかも…etc

・相関関係と因果関係
⇒相関関係があるからといって因果関係が成立するわけではない。一方で、相関というのは重要なヒントにもなる。このあたりが仮説構築と検証の段階で非常に重要。
 

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